恋愛小説レビュー【ぼくときみの半径だけに届く魔法】ネタバレ注意
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こんにちは恋愛開運堂のチャーリーです☆彡
今回は七月隆文(ななつきたかふみ)さんの恋愛小説「ぼくときみの半径だけの届く魔法」(幻冬舎文庫)を読了しました。
いくら仲のいいカップルでも、時には些細なケンカや言い争いはするもの。
ケンカする程仲がいいなんてこともありますよね。
なぜそれでも二人の関係が壊れないのか?
それを再認識させられるステキな恋の物語…レビューしちゃいます♡
あらすじ
売れないカメラマンの須和仁(すわじん)はある日、窓辺に立つ少女・幸村陽(ゆきむらはる)を偶然撮影する。
難病で家から出られない陽は、日々部屋の中で風景写真を眺めていた。
「外の写真を撮ってきて頂けませんか?」という陽の依頼を受け、仁は様々な景色を届けることに。
写真を通して少しずつ距離を縮めるふたり。しかしある出来事がきっかけで陽が失踪してしまい、それから二人の物語は転がり始める。
感想
「外に出れないきみと、出会って、撮って、恋をした。」
「写真」と「難病の少女」という素材の組み合わせ……
読む前からどうにも不吉な予感しかしないんだけど(笑)
しかし、冒頭から少しネタバレになりますが、思ったよりマイルドなストーリー展開で胃が痛くならずにすみました♪
仁と陽の出会いのきっかけとなった、偶然カメラのファインダー越しに見えた陽の姿…月明かりを受ける白い雪割草のようなお姫様。
その描写で僕もヒロインの陽に心を奪われちゃいます。しかも陽は高級住宅街の中でもひときわ目を惹く豪邸に住んでて、それが非日常感に拍車をかけます。
実際陽は、ほんのわずかなストレスでもアレルギーの発作をおこす難病のため、家から一歩も出られないという非日常な状態にあるのですが……
そのため、陽は仁に日常の風景の写真を撮ってきてくれるようにお願いする。
一方で主人公の仁は、出世する友人達に遅れをとり未だにバイト生活。
抜けられない閉塞感からか何を撮りたいのかが分からないという漫然としたものが、仁の写真からも伝わりそれを師匠からも指摘される。
そんな仁は陽と会ううちに、陽を「撮りたい」という激しく駆り立てられる衝動が体の奥からこんこんと湧き出てくる。その想いが仁に良い方向へ影響し、仕事は軌道に乗り出すのです。
平面に切り取られた一枚の写真には、撮影者の熱量や想いが不思議なほど現れるものなんですよね。
そして逆に写真家は、一枚の写真からその奥にあるモデルの想いや撮影者の意識というものを敏感に感じとることができる。
なので、原因不明の病に苦しむ陽の難病の原因を突き止めることが出来たのでしょう。
人間だれしも些細なことで傷つき、傷つけられ、それでも関係が壊れないのは、その根底にあるものが流れてるからではないでしょうか。
その「あるもの」とは……
「愛」です。
自分がいかに愛し愛されてるかという事を忘れなければ、人との絆というものは簡単に壊れるものではありません。
現実の世界は、いい事もあれば嫌な事もたくさんあります。なので写真は「現実なのに現実より素敵になる」魔法でもあるのです。
しかし心を開いて、その開いた心を預けた相手と見聞する、修正や切り取りのいらない本物の絶景は、体の奥から揺さぶってくる。
それは写真では伝えることができない生の体験の部分があるからなのです。
この物語は、自分がどのように両親から愛され生まれてきたのか、パートナーをどんな風に愛し信頼し交際を重ねてきたのか……ともすると忘れがちになることではありますが、けっして忘れてはいけない大事な部分。
というより根幹である、ということを再認識させてくれます。
あなたも愛されているということ、忘れないでくださいね♡