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恋愛小説レビュー「このラブレターが、君の所に届くまで」

 

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 (画像元 https://www.amazon.co.jp/

 こんにちは恋愛開運堂のチャーリーです☆彡

 

あなたの想い人が、1年でいなくなるとしたらどうします?

 

それでも思い出を積み重ねるのか、辛い思いをしないように離れるのか……

 

どちらを選択しても苦しいでしょうね。

 

そんな濃い1年を過ごした男女の物語、優衣羽さんの「このラブレターが、君の所に届くまで」(角川文庫)レビューしちゃいます♡

 

 

  もくじ

 

あらすじ

 

中学2年の春、赤星宵(あかほし よい)は仲間達と撮ったショートムービーをコンクールに出す。

 

主演の夜通あかり(よどおし あかり)は、それをきっかけに注目を浴び売れっ子女優となる。

 

やがて2人の距離は離れ、宵は映画を観ることすらやめてしまう。

 

高校2年のクリスマスイブ、宵は街であかりと再会するが、彼女はある病気で余命1年だという。

 

宵はあかりの最期を遺したい一心で再びカメラを構え、再度コンクールに挑む……。

 

(本書より引用)

 

 

著者紹介

 優衣羽(ゆいは)

 

神奈川県出身、横浜市在住。

 

大学在学中に2018年ピュアフル小説大賞にて最終候補作となった「僕と君の365日」でデビュー。

若い層を中心に人気を集めている期待の若手作家。

 

 (本書より引用)

 

感想

 

期限付きの恋

いや~この物語…ぶっちゃけ泣きます!

 

ヒロインのあかりの余命が1年と分かった時点で、泣かされるストーリー展開だろうなと予想しますが、アマノジャクの僕は泣かないようにしようと密かな抵抗をしました。

 

……けど、泣いちゃいました(笑)

 

勿論のこと死を迎えるほうが辛くて怖くて、そして悔しい。

しかし、残されるほうもその後の時間の長さと、埋められない喪失感は言葉では言い表せない苦しみを生みます。

 

残りの時間を輝かしいものにしようとすればする程、その輝きが強かった場所やシーンが呪縛となって残された者に跳ね返ってくる。

 

宵はその事を自覚しながらも、必死でカメラを回し続けます。

 

そして、恐怖心を隠しているあかりを想い、溢れ出そうになる涙を何度も抑え込み「好き」という言葉さえ飲み込むのです。

 

あかりを普段通りに扱うことで、あかりに気を使わせないようにしようとする宵ですが、僕的にはもう少しあかりを甘やかしてくれないかな~(笑)

 

ともあれ、余命短い者への向き合い方……考えさせられます。

 

他人の才能への嫉妬

人間って本当に理不尽に不平等だなと常々思ってます。

 

宵は一度の失敗で自分の才能に自信喪失し、それどころか才能を発掘されたあかりに対する嫉妬心からあかりを遠ざけてしまします。

 

その気持ちって、すっごく理解できる。

 

僕も人の才能を羨む側の人間なので(笑)

 

多くの場合、一芸に秀でる者は多芸に通ずるパターンのような気がします。

例えば頭が良くてイケメンでその上スタイルも良い……なんて人いますよね。

 

そんな時、僕はとあるアニメのワンシーンでのセリフ「天の人に対するパラメータ配分は随分と適当なんだな……」をいつも思い出します。

 

凄く嫉妬します(笑)

 

しかし一方で、この物語の宵のように誰しもが自分では気づかない秀でたものを持っているとも思っている。

 

自分では普通に思ってることでも、他人から見るとスゴイことだったり……そういうのが才能って言うんですよね。

 

ただそれに気づけるかどうか、そしてその才能が好きな事と一致するのかどうかが重要だと感じてます。

 

幸せの形

人には必ず承認欲求というものが備わっています。

 

地位や名声にさほど執着が無い人でも、誰かに褒めてもらいたい、認めてもらいたいという心理は少なからず持っているもの。

 

この物語の主人公・宵もその名誉を喉から手が出るほど欲していました。

 

「どれだけ願っても神様は願いを叶えてくれないと、もう随分前から理解している」 

 

この気持ち、すっごく共感できる!

 

思うように行かない時って神頼みをしますが、当然ほとんどの場合効果がない(笑)

 

そして自分を棚上げして神様のせいにしてしまう。

 

ヒロインのあかりは先に名声を手に入れるのですが、その輝かしい世界もあかりにとっては全然輝いて見えないものだった……

 

その場所に辿り着いた者だけが分かるのかも知れない……本当の幸せってもっと別のところにあるということを。

 

宵も最後に気づきます……

 

本当に欲しかったものは名誉や称賛ではなく、愛する人との何気ない日常にあるのだと。

 

僕も歳をとって、静かで穏やかで丁寧に暮らしたいと思うようになりました。

しかし、現代社会は激動の中に身を置かなければ暮らしていけなくて、何気ない日常の幸せを噛みしめる余裕すらないのが現実なのですが(笑)

 

まとめ

この物語の最初のほうは、宵とあかりがこのまますんなり色んなエピソードをこなしていくのかな?と予想してましたが、いい意味で裏切られました(笑)

 

急転直下、ほんとに厳寒の冬のような心理描写に僕の脳内にも冬色が再現されていく。

 

しかし、宵のフィルムの中のあかりがラストへ向けて輝きを増したように、物語も段々と色味が出てきて濃色のフィナーレを迎えるところが圧巻です。

 

そして、この物語を読んでるあいだ中、僕の頭の中ではリアルな若手俳優たちが演技を繰り広げていました。

 

そう、この作品は絶対に実写版の映画で再現して欲しい!

 

あぁ~、映画館で号泣してる僕の姿が想像できる(笑)